Tony’s

トニーズの前にトニーズはなく、トニーズのあとには有象無象のレストランが・・・、と言われるくらい誰もが知っているのに、値段の高さにほとんどの人が行ったことはない、と言うレストランがトニーズ。日本の感覚でちょっと高級なレストランに行くと思えば良いのだが、こちらの金銭感覚に慣れてしまうと卒倒ものの金額になる。店はマーケットストリートに面していて、バレーパーキングオンリー。非常に小さな看板が壁に埋め込まれているだけなのでわかりにくいが、バレーの係員を目安に見つければ良い。店内は豪華で落ち着いた内装にまとめられ、バーはやや小さいものの店員の応対は日本並みだ。たばこをくわえると店員が飛んできて火を付けてくれる、と言うのをアメリカで初めて体験した。店内は150人くらい入る大きさで、大きめのテーブルを使っているのでかなり広く感じる。この店の最大の特徴はサービスの良さだ。社用も当然OKで、1人あたりは$100以上、ワイン次第だ。ちょっとサーバーが何度もしゃしゃり出てくるのがうるさい気もするが、この店の習慣だと思って耐えるしかないだろう。

次にこの店の特徴はセントルイスで最大を誇るワインセラー。最高のワインは$1600と言うとんでもない値段だし、年代物の赤ワインがずらりとリストに並び、数百ドルのワインばかりが並んでいるのは見ているだけで足が震えてくる感じだ。驚いたことに、赤ワインで有名なオーパスワンなど「中くらい」の値段でしかない。もちろん、数十ドル付近の価格帯のワインも一通りは揃えてあり、それはそれで値段に合った良いワインがある。$70から$90位のワインは他の店と変わらない値付けだ。

この店はイタリアンなのだが、少し(結構?)フレンチ系も入っていると見えて、イタリアンの特徴のはっきりとした明快な味付けだけでなく、手間をかけた複雑なソースの皿もある。全体的にはイタリアン系の皿は軽めの味付けなので、濃い味が好きな人にはお勧めしない。食材はどれも値段に見合っており、缶詰でないエスカルゴを出す数少ない店でもある。もちろんバターは自家製で、軽い皿の味に合った軽い味わいのものだ。また、カルパッチョは熟成の利いたとろけるような肉で、軽めの赤ワインとは最高の取り合わせだ。パスタはラビオリなどの平たいパスタは自家製、リングイニなどの長いパスタは乾麺だ。トマトソースとホワイトソースの両方を試したが、僅差でホワイトソースの方が美味しかったのはフレンチの影響か?あるいはトマトの時期ではなかった(2月)からかも知れない。尚、リゾットは少し味が濃いめだが、ちゃんと米の芯を残してあり、適度な歯ごたえを楽しむことができる。但し、バターの味がきつかったという人もいるので、味にバラツキがあるのかも知れない。確かに少し油っぽい料理があった。

メインディッシュはどちらかというとアメリカ系に近いドンとしたボリューム重視の単純な皿が多い。何種もあるシーフードも基本的にはステーキ系だ。その中でトリオビーフメダリオンはフレンチの系統の料理だが、小さめの肉3種に3種類のソースをかけた楽しい皿でお勧めできる。子牛の皿が多いのだが、どれも軽い味わいに仕上がっており、女性にはお勧めだ。

デザートはこのクラスの店としては特に目立ったものはないが、どれも安心して楽しめる。ちょっと洒落てみたい方にはザバイヨンソースをかけたクレープなどは如何だろうか?クレープシュゼットと基本的には同じもので、オレンジソースがカスタードに変わったものと思えばいい。目の前でフランベ(ブワッと火が点くやつ)してくれる。あとはブリュレ(プリン)やクレームアングレーゼ(生のカスタードソース)のスリーベリー(ベリー3種盛り合わせ)などはお勧めだ。

 

Giovanni on the Hill

目下、私の知る中ではこの辺りで一番味の良い店である。店はシンプルだがクラシックな感じで、照明はかなり暗い。テーブルの上のキャンドルの明るさがありがたいくらいである。150人程度入る店内はいくつかに仕切られているので、余り広い感じは受けない。味の良さが売りだが、一人当たり$70以上は見ておく必要があり、社用としての方が向いている感じだ。因みに駐車場はバレーパーキングのみだ。

この店で一番美味いのはパンと一緒に出されるバターである。知り合いのイタリア人が「この店のパンもバターも国の味と同じだ」と喜んだそれは、正統派のイタリアのパンなので堅めで表面は乾いている。ただ、残念なことにパンは最近、手作りをやめて市販品に切り替えた。手作りなのはバターばかりではない。エンゼルヘアーを除く数種類のパスタも手作りの味だ。もっちりとしたパスタをアルデンテで(ちゃんと注文しておこう)楽しめるのは、今のところここだけと思われる。今日のお薦めを聞いてみて、気に入れば注文してみよう。良い材料がないときは「今日はメニューだけです」と言うので、お薦めがあるときは試す価値がある。但し、この時に値段を聞いてもまともには答えてくれない。ときどき、「今日のスペシャル」では一皿$40近い値段を取るときもある。2001年に入ってメニューが若干変わり、私の好きだった前菜取り合わせが無くなった代わりにいくつか新しい皿が加わった。また、全体的に少し塩味が強くなったことから料理人が変わったと思われる。新しいメニューではパスタの値段はフルポーションでの価格表示となり、前菜ポーションでは半額となる。

ワインの品揃えは、料理の値段を考えると妥当な線だが、不自由しない程度で余り多くはない。もちろん、オーパスワン等は$200くらいする。お薦めは前菜では盛り合わせとカルパッチョ、パスタはメニューもあるが、「リングイニにトマトソースベースでサーモンを入れて、ケッパーを散らして。アルデンテで」等と言えばその通りにしてくれる。肉ではオッソブッコが濃い味の好きな人に良い。魚料理は、できればお薦めの中から。但し、この店の店員は年齢が高く、プライドも高い。注文を間違えたのでチップを半分に減らしたら口論になったことがある。デザートは普通。

 

Dominic’s

ジョバンニと良く似た感じだがずっと明るい店内で、客はアメリカ人の方がずっと多い。店の規模は同じくらいで150人位入る。店員は若い人もいて、普通のレストランのように明るい雰囲気だ。予算は一人$60位と言ったところか。もちろん社用も可能だが、一番似合うのは夫婦二人で気楽に大切な時間を楽しむという感じだろう。

手作りと思われるバターは冷凍保存している可能性があるが、そこそこ美味しい。料理全体の志向は、ややアメリカンを取り入れてあるので、どの皿もはっきりとした濃い目の味付けである。ワインはそれなりの品揃えがあるが、ビールでも楽しめる感じの皿がおおい。ここの最大の売りは店員の応対の丁寧さ。さりげなく何度も目を配っている。これは料理の味を一味押し上げるくらいの効果はある。

パスタは残念ながら乾麺主体だが、言わなくてもアルデンテで出てくるのは嬉しい。乾麺の味は標準だが、ソースは塩味がわずかに強めなのを除けばいい味だ。ラビオリ系は手打ちと思われるが、冷凍してあるのか小麦粉が違うと見えて歯触りが余り良くない。パスタなら麺系を薦める。尚、ジョバンニもそうだが、メニューに載っているパスタの値段はアペタイザーポーションなので、ディナーポーションを選ぶと倍の値段になる事にご注意。

この店は日本人のファンが結構多いのは事実である。気取らずにそこそこのレベルの料理を気楽に楽しめるのがその理由と思われる。

 

Kunetto House

イタリアンヒルの中でも南の端の方に位置するこの店は、いつもアメリカ人で大混雑だ。予約を受け付けないが、「1時間待ちです」と言われてひるんでいてはいつまでたってもテーブルには付けない。待つのが嫌なら9時半以降となるが、10時オーダーストップなので前菜+パスタくらいになってしまう。それ程人気の店なので、店の前にはいつも順番を待っている人が溢れている。一人当たりの予算は$20くらいだ。ここではコースを頼んでも食べきれないだろう。

店は200人は入るほど大きいし、待っている人のためのバーの大きさも、レストラン付属としては多分セントルイス一の大きさがある。ここの店の人気の秘密は、日本人でも許容できる味でボリューム満点、な事に尽きる。パスタでは、クリームソースの味はガーリックの効いた薄目の塩味だし、ミートソースはトマトの濃い味が楽しめる。1リットル以上はあるので女性なら二人で食べても十分だ(私は一人で食べるが)。友達と一緒に行ってみんなでシェアしながらいろいろな皿を楽しむのが向いているし、実際アメリカ人達もそうしている。

言い忘れたが、パスタは当然乾麺使用だが、アルデンテに近い、やや堅めで出てくる。値段を考えると確かに混むのが納得できる店である。