東海岸何でもありの珍道中

第六部 家路

13日目 コロンバスまでの旅  
ニューヨークからワシントンDCまではアムトラックのアセラエクスプレス。そこで車を拾ってコロンバスまで行きます。
今日からいよいよ家路です。たくさん遊んだので思い残すことは無し。ついでにお金も無し。

ペンシルバニア駅にはホテルからタクシーを使ったので、あっという間に着きました。だから、出発まで1時間もあります。

ペンシルバニア駅って、マジソンスクエアガーデンの裏になる(どっちが表かは知りませんが)んですね。

 

 

駅前に出ていた屋台にアイスコーヒーを発見!

注文すると、「アイスコーヒー?なんだそれ?」と言われましたが、他の店員が教えたらしく、ちゃんとアイスコーヒーが出てきました。

アメリカに3年半住んで初めて発見したアイスコーヒーです。さすがニューヨーク、セントルイスでは「あんた、アイスコーヒー飲むの!!」と(まるで奇妙な飲み物と言わんばかりに)同僚に驚かれますが、ニューヨークでは少しだけポピュラーなようです。

味は?普通のボトル入りアイスコーヒーでした。少し甘かったです。そう、でっかいボトルからコップに入れてハイどうぞ、と言うタイプです。

 

電光掲示板の一番下に燦然と輝くのが昨年暮れにできたばっかりのアメリカ版TGV「アセラエクスプレス」です。これに乗ってワシントンDCまで帰ります。

アセラエクスプレスの乗客には、専用の待合室があるので、のんびりとテレビでも見ながら待つことにします。待合室と言っても、待合いエリア、と言う感じのものですが・・・。

出発10分前になって、やっとアナウンスが入りました。みんな、ぞろぞろとホームに向かいます。

 

ホームではアセラエクスプレスが待っていました。1等と2等がありますが、我々は2等。普通の特急と同じように座席の指定はありません。『満員になったらどうするんだろう?』と思いますが、チケットの発行を制限しているのか、チケットには日付と列車番号、発車時間や等級が書いてあるだけです。

因みに、このチケットは旅行代理店から買ったので、飛行機のチケットと同じ紙です。

みんなが乗ったらすぐに発車。あわただしいです。

 

発車していくらもしないうちに車掌さんの改札です。

入り口の上には日本の特急のような多目的情報板があって、チケットの予約やセールの情報を盛んに流しています。飛行機みたいな荷物入れがありますが、見かけほどたくさん入りません。

なお、通路のドアは発車後しばらくは開いたままでしたが、いつの間にか普通の自動ドアになりました。通路が少し曲がっているのは、トイレのスペースを十分に取るためです。

座席は普通のなんの変哲もないものです。が、ヘッドレストは上下にずらすことができますし、ヘッドホンを持っていれば音楽を聴くこともできます。リクライニングの角度はごく普通です。
足を乗せられるようになってはいますが、あまり実用的ではなく、どちらかというとデザイン優先という感じ。

テーブルもグッと引き出せるのは良いのですが、縁になにも着いていないので、簡単になんでも落ちてしまいそう。おまけに、スプリングで元の位置に戻るときにバチン!とすごい音がします。

いかにもデザイン重視のフランス製と言うところでしょう。

車両間のデッキは幌の存在がほとんど分からないくらいの優れたデザインです。何より通路自体を広めに作ってあるので、とても歩きやすいです。

普通特急でニューヨークに来たときは、車両の揺れが少し気になりましたが、同じ線路を走っているとは思えないくらい、乗り心地が良いです。さすがに2倍の値段を取るだけはあります。

たぶん、車両間ダンパーを装備しているものと思います。揺れで通路がずれることはほとんどありませんでした。

やはり絶対アメリカ人のデザインではない、と確信できるラウンジです。カメラを向けると奥のバーテンが「1枚$25ドルだ!」と笑って言いました。

置いてある品揃え自体は普通特急と変わりません。値段も同じ。

朝早いためか、カフェにはあまり人が来ませんでした。テーブルの上にあるのは私が買ったアイスティーとビールです。

テレビもありましたが、何回通っても消えたままでした。

言い忘れましたが、このアセラエクスプレスはフランスのTGV公社から購入したフランス製の特急で、最高速度は200Km/hを誇ります。

もちろんTGVや日本の新幹線より遅いのですが、「フランスのは特別な線路だろ?これは普通の線路を使ってこれだけの速度を出すところに素晴らしさがある」とはバーテンの意見でした。因みにフランスの普通特急は最高速度160Km/h、日本では140Km/hです。

自分で撮影して置いて、なんだっけ?と思ったこの写真は、出入り口にあるドアの開閉ボタンです。駅に止まったら、自分でこのボタンを押してドアを開けます。外側にも付いています。
各車両(と言っても2等車にしか入れないので1等は知りません)の両端には一人用の座席があって、テーブルが付いています。前後にぱたんと広げるようになっていて今は前だけ広げてあります。

それと、全ての座席にノートパソコン用の電源が付いています。電話は飛行機と同じもので、クレジットカードで使います。

車両の出入り口には荷物置き場も作られていますが、誰も使っていませんでした。考えてみれば、ニューヨークの駅は階段だらけ。ここに入れるほどの荷物を持って列車までたどり着ける人はかなりの強者に違いありません。

車掌がしょっちゅう出入りしているので盗難の心配はあまりなさそうです。誰かが乗ると、発車直後に車掌が来て改札をしていきます。

各座席の上にはデスクライトを兼ねた小さなディスプレイがあって、何かを表示できるようになっています。ごらんのように座席に番号も振ってありますから、指定車両にもなるのでしょう。
各車両に一カ所だけ4人用の座席がありました。早い者勝ちなのでしょう。因みに、座席は回転しません。と言うか、私がいくらやっても回転しませんでした。たぶん、特別な操作が必要なのでしょう。

乗り心地の良さはどれくらいかというと、新幹線の300系のぞみよりは良くて、500系よりは下です。居眠りするのにはなんの問題もない、と言うところでしょうか。500系以上の乗り心地を期待していた私はちょっとがっかりです。

本物のTGVはすばらしい乗り心地だそうです。

出発して3時間後、ほぼ定刻(ほぼと言うのがアメリカ的)にワシントンDCに着きました。普通の特急より30分速くて、倍の値段にもかかわらず、7割くらいは乗っていました。

もう一度乗りたい??いいえ、3時間で2万円というのは高すぎます。一度で十分でしょう。

先頭車両ではみんなが写真を撮っていました。日本以上に列車の旅が珍しいので、こんなかっこいい列車を見た人は驚くようです。

TGVの本場のフランスでは2階建ても走っていますが、アメリカで走ることは当分なさそうです。

先頭車両の横で写真撮影です。これは機関車なので、私の後ろには放熱用のフィンがズラリと並んでいます。客車が静かな分だけこっちはすごい音でした。
ユニオンステーションから車を置いてあるホテルに行って車に乗り換え、一路西を目指します。時刻はお昼ですが、これから400マイル走らなくてはいけません。

ところで、セントルイスにもI-270がありますが、200、400、600等百番台が偶数の高速は、もとの二桁の高速(この場合70)の環状線を意味します。だから、I-70沿いにはあちこちにI-270があります。

これはその最初のI-270でワシントンDCにあります。

ワシントンDCはもの凄く狭いのですぐにメリーランド州になりますが、そこからアパラチア山脈を抜ける頃にペンシルバニア州に入ります。田舎道ですが、道路は良いです。
アパラチア山脈は、山と言うより丘が延々と続いている感じ。19世紀半ばになるまでこの山脈が越えられなかったというのはちょっと信じられません。

ともかく、のんびりとした酪農主体の田園風景が広がります。

西に向かって走っているので、写真が逆光になってしまって看板が見えませんが、ウェストバージニアに入りました。(心眼で見てください)ウェストバージニアはもの凄い田舎です。特に大きな街もありません。
ここまで夕方になると、逆光をもろに浴びて何も見えなくなりますが、やっと本日の目的地、オハイオ州に着きました。州境からコロンバスまで100マイル少々。2時間弱で到着です。
  ↓いきなりですが、アイゼンハワーが高速道路網を整備したという看板をレストエリアで見つけました。興味のある方は看板の文字を読んでみてください。
  コロンバスに着いたのは夕方6時頃。なぜか街中のレストランが閉まっていました。ホテルは$70、夕食は二人で$15と思いっきり倹約モードに入ります。

本日の走行距離: 410マイル

   
14日目 我が家(セントルイス)へ  
いよいよ最終日。今日はただひたすらI-70を西へ西へと走ります。
コロンバスにもI-270があります。今日はI-70しか走らないので、道を間違える心配がありません。おまけに、自分の家に帰ればいいのですから、焦って帰る必要も無し、気は楽です。
何と、オハイオ州は州を出るときに豪華な看板で見送ってくれました。意外と金持ちなのかもしれません。

ホンダで潤っているというのは本当なのでしょうか?

対して次に入ったインディアナ州は小さな看板一個だけ。まるでミズーリ州のようです。
インディアナポリスまで来たら、懐かしい!セントルイスの文字が見えました。あと300マイルです。見慣れた文字なので、なんかホッとします。もうすぐそこまで帰ってきたんだなぁ、と嬉しくなります。実際は500キロも先ですけど。
ついに見慣れたお隣さん、イリノイ州に入りました。あの看板の絵まで懐かしく感じます。ここまでくると、あと2時間半くらいでセントルイスです。この辺りは道路が少し混んでいて、おまけに工事ばかり。なかなか距離が稼げずに時間が過ぎていきます。

しかし、もうすぐです。

やったー!!!!

夕方の5時半に帰ってきました。これはミズーリ川を渡ったところです。本当の州境は川中島にあって、浮かれている間に通り過ぎてしまいました。

何はともあれミズーリ州セントルイスです。

本日の走行距離: 440マイル

今回の旅行は途中、自動車事故であわやという所もありましたが、愛車はよく頑張ってくれました。全走行距離2935マイル、約5000キロで、列車での移動を加えると更に1500マイルプラスされます。

追伸:家で会社のサーバーのメールを見たら200通も溜まっていました。読むだけでも大変でした。

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